2020年2月28日金曜日

『SHARK』に一首(サメの百人一首) 九首目は「抉るように食うべし」

サメで百人一首を目指す、『SHARK』に一首。

サメと百人一首のコラボ。ありそうでなかったようで、実はあるそうです。

「さめかるた」と称し、島根県の水族館、しまね海洋館アクアスで配布されていたとの情報をキャッチし、 この企画がパクりなのではという投書が来ないことを祈りつつ、クオリティでは負けないという気概で続けたいと思います。(初出は、2015年の「今様 百鮫一種」という沼口麻子さんとHaieのコラボネット番組「ぶぶサメ」のコーナーです)

 サメで百人一首を達成しようとする無謀な企画は継続中です。現在8首公開しておりますが、年内達成はほぼ絶望的です。それでもお付き合いくださいませ。

では参る。

千切り食い カッター身に口を絞りつつ 吸い付き回るわ 食み小さじとは

サメ好きなら、もうおわかりですね。 
ツノザメの仲間「ダルマザメ」です。
学名:Isistius brasiliensis 
科博 海のハンター展での剥製展示 Haie撮影
   ※参考 FAO(世界食糧機関)のイラスト体制模式図はこちら
 ダルマザメは、体長50センチ余りの自分よりもはるかに大きな獲物イルカやクジラ、マグロなどに対して、吸盤のような唇でその体の表面に吸い付き、そして鋭い歯で肉ごと抉り取るという、英名のクッキーカッター(cookie cutter)を体現する食事方法が知られています。 
沖縄の海洋文化館に展示されているコブハクジラの剥製にはダルマザメの食痕がくっきり。Haie撮影


 ダルマザメによって 、抉り取られた傷は痛々しいですが、10センチにも満たない傷は決して致命傷にはならないというあたりは優しいサメともいえます。この生存戦略を画期的とシャークジャーナリスト沼口麻子さんも評しておられます。(ほぼ命がけサメ図鑑)

ヨロイザメの顎の骨 構造はほぼ同じ。左側が下顎となる。串本海中公園にて Haie撮影

 不殺生の体表面を削る・吸血するなどの方法を他の生物で考えますと、寄生虫、ヒル、蚊やヤツメウナギ、ニセクロスジギンポなどが思い浮かびますでしょうか。
  いずれも「足るを知る」生き方であると言えましょう。病気を媒介するなど一部は厄介ものですが。

ダルマザメの液浸標本 胸の濃い色の部分が分かる。海遊館特別展 SHARK WORLDにて Haie撮影


 速く泳ぐ大型水生生物の身体にどうやって的を絞って、吸い付くのか、興味深い点ではありますが、恐らくはバクテリア発光する体でおびき寄せるか、単純に活動の遅い睡眠状態の時を襲うのではないかと思います。 ダルマザメの胸の黒い部分は果たしてどんな意味があるのでしょうか、謎多きサメです。潜水艦型の体型で尾びれを小刻みに動かす様は、スクリューを連想させそうです。

 地味にB級映画出演、フィギュア化やぬいぐるみ化も果たすちゃっかり者で、世渡りジョーズな面もあります。おそまつ!

 元句は「契りきな かたみに袖を絞りつつ 末の松山 波越さじとは」という清原元輔(きよはらのもとすけ)の歌です。「清」の名からわかりますが、枕草子で有名な「清少納言」の父上であられます。歌の意味は、かつて涙を拭うように、津波をも越さないという松山に例えて誓い合った二人の愛はウソだったのか、という嘆きともいうべき心情を歌っております。
 誰かの思いを仮託した、代読らしいのですが。真に迫るはさすが、名誉ある帝の寄人「梨壺の五人」 メンバーに名を連ねるのも納得です。

 千切るという表現について、「細かくする」という意味と「無理にもぎる」という意味を併せ持つのですが、後者の意味で使っています。元句は「契る」という約束の意味ですので完全な言葉の置き換えでもあります。

 『SHARK』に一首は、百人一首の持つ表現の豊かさを継承しつつ、それをサメに当てはめたらどんな言葉遊びができるだろうかという、ある意味無謀な挑戦です。
 ボキャブラリーの豊富さを問われますが(語彙に乏しいオッサンがひねり出してます)、サメの生態や連想するフレーズなど吟味して、作成しています。
 誰も褒めてはくれずとも、サメ好きが見てクスッと笑う、感心するような句を作っていきたいものです。
 私のお遊びにお付き合いくださいましてありがとうございます。

参考資料:「美しき捕食者 サメ図鑑」(実業之日本社)ほか各地サメ展など 

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