2020年1月31日金曜日

『SHARK』に一首 タコクワーヤ 蛸食う関君

 もうないと思うと見せかけてまだある、百人一首のサメ版『SHARK』に一首。
年明けてもうひと月たってしまいましたが、十首にも満たないという怠け具合で投稿しています。
 終わらなければ続いているをモットーにユルくやります。
 表題は、夢路いとし喜味こいし師匠の往年の漫才ネタより、「我が家の湾岸戦争」です。名作なのでどっかで見たことあるでしょう?
  では、

蛸の旨味 口入れてしまえば 占めたもの オオテンジクザメ 口にヒゲつく

 オオテンジクザメは、日本でも南西諸島に棲むテンジクザメの仲間で、3mにもなると言われています。大きいですね。
 学名: Nebrius ferrugineus
 
とぼけた顔してやるときゃやります。オオテンジクザメ。ニフレルにて Haie撮影

  歯も小さく大人しいとされていますが、某水族館館長さんはエサをあげる時に、このサメに危うく腕をもがれそうになったというくらい恐ろしい吸引力を発揮するそうです。
2016年のニフレルにて Haie撮影

 「タコクワーヤ」という沖縄の呼び名があるくらいタコ好きで、夜な夜な穴や隙間に隠れたタコを持ち前の吸い込むパワーでズボッとやるそうです。ヒゲは皮弁(ひべん 以前は鼻弁びべん とも)という感覚器官で、エサを探すのに使われるそうです。タコを咥えたらもじゃもじゃヒゲみたいになるでしょうか。


 よくコモリザメと間違われますが、こちらは日本の海にはいなくて色がやや暗く、背ビレが尖り気味になってないので、じっくり見ればわかるかと思います。多分。
恐らくコモリザメ。動かない。海遊館のあるコーナーにいます。Haie撮影
図鑑によっては両者を取り違えていたりするので、ネットの画像ではよく混同されています。大体ネットでサメ画像を拾おうとすると、違う種類のものがよく引っかかるので、見分けのつかない人は大人しくごついめの図鑑(つまり魚類検索などで使うもの)を引用して欲しいものです。
      『ネットのサメ画像はそうであると見分けられないと難しい』。

海遊館では、太平洋水槽の最下層で寝そべっていることが多い。Haie撮影
私も日本のサメ図鑑を買っては、「また違う種の写真が載ってる!!」と静かな怒りに震えつつ、「でも出してくれてありがとう」の感謝を忘れない寛容な心を抱いているつもりです。
 おおっぴらに指摘はしませんが、興味のある方はイベントででもこっそりお話をしましょう。

 ちなみに以前は大阪吹田市のニフレルで飼育されていて、彼のいる水槽にこんな紹介文が載っていました。

夜の海 ジュッポジュッポとタコを吸うイヤーン (*ノωノ) 
第二背ビレがないという個体もいるらしい。美ら海にいたかな?ニフレルにて Haie撮影

エヘン、元句は、「田子の浦に うち出でて見れば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ」という万葉集でも有名な山部赤人(やまべのあかひと)の、駿河湾から見る冬の富士山の美しさを讃えた歌です。聖武天皇のお仕えとして、奈良の情景のみならずさまざまな美景を歌にした歌人ですね。

 「蛸の旨味」と聞いて、大阪のたこ焼きを思い浮かべる人がいたら、海遊館へ行くが吉です。(実際、海遊館に大きなオオテンジクザメがいますよ)
 豪快な吸い込み給餌を見られるかもしれません。タコはあげてなかったとは思いますけど…。
しまねアクアスにいる君はどっちだい!? コモリザメ?


 

2020年1月24日金曜日

『SHARK』に一首 にわにわにとはにわとりがいる

毎日続けられない流浪のサメ詠み 百人一首のサメ版『SHARK』に一首。

ここにきて、重要なことに気が付きました。それは…私のこの投稿には必ずサメの写真(自弁)を用いていますが、私がファインダーに収めていないサメはアップできない問題が発生するようなのです。これは参った。
 というわけで自弁の標本なりをご用意できないものはお蔵入りとなる見込みです。
(※タイトルは 庭にワニ、はにわ、鳥がいる が正解です)

 暗雲の立ち込めるこの企画、では気を取り直して。

ワニ歯型 短き背ビレ 不思議だね 泡を呑み込み 静止してんのや

 サメの名が入らないシリーズ。今回は水族館ではおなじみの絶滅危惧種(ⅠB)のレア種、シロワニです。
 学名:Carcharias taurus


背ビレは短く第一第二もほぼ同じ大きさ。京急油壺マリンパークにて(Haie撮影)

 歌はシロワニが胃の中に空気を取り込み、水中で静止するというサメ界では離れ業を持つことを歌い上げています。(「してんのや」は関西弁やで!)
 このため、スィーと泳ぐ普通のサメよりも割と被写体に収めやすい、撮影の腕に自信のない私でもキレイに撮れるサメです。
水中静止だけでなく、海底で佇む姿も。京急油壺マリンパークにて(Haie撮影)

 小笠原諸島で岩場などに棲むとされていますが、日本の水族館のものはかつてオーストラリアや南アフリカなどから輸入されたものがほとんどだそうです。

 日本でも割と大型の水族館で見られる種です。ネズミザメ目の仲間では、唯一飼育に成功した例ともいえます。
 Haieの知る限りでは、アクアワールド大洗の多頭飼育を筆頭に、しながわ水族館(区立の方)、八景島シーパラダイス、京急油壺マリンパーク(撮影には最適)、東海大学海洋科学博物館、鳥羽水族館、須磨海浜水族園、マリンワールド海の中道などです。(現在飼育継続かどうかは不明です)
旧サイトでトップ画像として使ったシロモノ。アクアワールド大洗のシロワニ達(Haie撮影・加工)
  しかし繁殖に成功したという報告は日本では聞かれないので、雌雄が揃っていても相当難しいのでしょう。(海外では南アフリカであったと記憶している)
 国内某水族館では、妊娠までこぎつけたものの、死産であったという例はありました。
 そこでは春先にシロワニのメスがオスから追い掛け回され、からだに噛みつかれ(交尾時は噛むのが仕様)、皮膚がぼろぼろになった姿を見かけることも。

 痛々しいのですが、キスマークと見方を変えれば、ラブラブな証拠と思えなくもないでしょう。
静止しているのでこのようなアップも自由自在!京急油壺マリンパークにて(Haie撮影)

 東海大学海洋科学博物館で、サメ博士田中彰先生と館内の大型水槽にいるシロワニを観察したところ、田中先生を認識しているのか覗き込む先生を凝視しその場に止まりにらめっこする場面も。
「目と目で通じ合っている!」
 サメと相思相愛であるという、うらやまなエピソードでした。ヒューヒュー!


 元句は「難波潟 短き芦の節の間も 逢わでこの世を すぐしてよとや」 。宇多天皇のとき、中宮に仕えた侍女、「伊勢」が詠み人。大阪湾の干潟に生える芦の節のような短さですら会うこと(逢瀬)も叶わず死ぬというのか、という待ち人を焦がれる悲哀を狂おしく詠んだ恋歌です。恋多き女性であったと聞きます。

 自然下では、逢瀬も叶わぬサメ達も多いでしょうに…え? 人間もですか。
 
 今日はこのぐらいで勘弁しておくれやす。
 
参考文献:「サメ・ウォッチング」(平凡社)、「美しき捕食者 サメ図鑑」(実業之日本社)、京急油壺マリンパーク展示、アクアワールド茨城県大洗水族館展示

2020年1月21日火曜日

『SHARK』に一首 日本全国サメ詠み音頭

♪サメが詠めるサメが詠めるサメが詠めるぞー、サメが詠める詠めるぞ、サメが詠めるぞー。(バラクーダなんて今の若い人は知らない)

 『SHARK』に一首、でサメが詠めるぞー。

 すでに毎日投稿が難儀になってきていますが、毎日30レビュー位はしてもらえているので、よしとしよう。誰得企画なのは言うまでもないですが。

 では参る。

 地に潜る 噛むよ待ち伏せ たった今 カスザメ現れ 丸呑みとは」 

 だいぶ苦しくなってきましたがまだ許容範囲の歌です。
今回はカスザメを題材にしました。英名は「Angel shark」…エンゼルシャーク、天使の羽がついているかららしい? アメリカじゃ「Sand devil」らしいけど。
学名:Squatina japonica

鳥羽水族館にて、割と露出気味のカスザメ。Haie撮影


 日本の浅い海底にいるカスザメ。サメの特徴でもある楯鱗(じゅんりん)で覆われた体表がかなりザラザラチクチクするので、わさびおろしにも使われるような革製品としても重宝されます。背中の頂点には大き目のトゲのような鱗が逆立っています。

  またかなりおいしいらしく(私はまだ食したことはないです)、地方によってはごちそう扱いされることもあるそうです。(九州などでだったと記憶しています)
 デイリーポータルZというニフティ最後の牙城で、カスザメ釣りと食の記事が紹介されています。
東海大学海洋科学博物館にて、砂が少なすぎて潜れない!Haie撮影
 水族館でもサメ飼育に割となれた園館では長期飼育もしているようで、海遊館や須磨海浜水族園でも特定の水槽でその姿を見ることができたりできなかったりします。

          カスザメの泳ぎ回る動画。saeki haruka チャンネルよりリンク。 

 なぜかというと普段は砂地で、体を潜らせて姿を隠しているので、いても見つからなかったりします。
 獲物を待ち伏せし真上を通る獲物にガバッと噛みつくわけです。 目玉が上に向いているため、パッチリお目目を常に上目使い。
 女子力の高いサメで、皮膚から粘膜のようなもので体を覆い、砂地に潜ってもお肌が荒れないという美容を実践しているそう。(件の東海大学の水族館で、田中彰先生が保護粘膜が出ているみたいですと解説してくださいました)
  その保護粘膜がないと簡単に寄生虫などが侵入し、弱ってしまうそうです。これはエイにもみられる特徴でもあるのでエイと間違われそうですが、サメ通の方ならご存知のサメとエイの見分け方、「エラある向き横か下か」で判別がつきます。サメ横エイ下です。
 日本には、同じ属でネズミ色のコロザメ、そしてタイワンコロザメが棲んでいるそうです。
 
左がコロザメ(小)、右がカスザメ(名古屋港水族館にて)Haie撮影

 台湾の種類は南西諸島で見られるそうで、本土周辺にはいないようです。台湾のお魚図鑑では、「臺灣琵琶鱝ってエイじゃん! と紹介され、「燻食美味」と評価されています。

 これは恐らく台湾のサメ料理「鯊魚烟」のように燻製にして食べるとおいしいということなのだと思います。
 台湾B級グルメとして基隆などで食べられる代物です。私も台北の「柴寮仔鯊魚煙」 という百年続く老舗の屋台で食べましたが、(コロザメかどうかは判別できませんでした)台湾ビールとよく合う一品でした。
 オナガザメやアオザメを使うと店主は言っていました。オナガザメは目玉がおいしいらしい。また食べたいですねぇ。

 元句ですが、
 「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に水くくるとは」 という平安の色男、在原業平朝臣の有名な歌です。
 恋い慕う二条御后(倫なきや)、の部屋にあった川を流れる美しい紅葉の屏風に沿えた歌だそうで、紅葉で赤く染まる川の美しさを大胆に表現して感動を押し出しています。ご機嫌取りなのでしょうかね。

 カスザメも紅葉を散らしたような鮮やかな色をしています。「からくれなゐ」を「かくれない」とかにしたかったなぁ。
 ちなみにこの歌は汎用性が高く別のサメでも使う予定です。百首はムズカシイネ!
 
 参考文献:「臺灣常見魚類図鑑  2.深海底棲魚」(戸外生活図書公司)
 
  

2020年1月18日土曜日

『SHARK』に一首 オリーブの黒飾り

サメマニアの歌会始を催したい今日この頃、その試金石ともいえる百人一首のサメ版『SHARK』に一首。

 毎日の連投はさすがに厳しいので、折を見てぱぱっと投稿します。今はまだ歌の出来がましな方ですがどんどんひどくなるので、無理からを楽しむのもこの『SHARK』に一首の醍醐味といったところ。 (すでに目的がおかしい)

 五日目は、有名どころゆえに敢えてサメの名を入れないという異色作、ご期待ください(ワタリテツヤさんの声で)。ではどうぞ。

尾も黒く 浮き餌を食べに 泳ぐかな ピンと立つ背に 墨染のヒレ」 

 ヒレの先が黒い。これはサメ界では割とポピュラーな特徴で、数え上げればキリがないほど種類がいます。しかしヒレの先っちょにチョビ髭のような申し訳程度の黒染めはあれど、しっかり黒いのはあの子しかいません。
 ツマグロです。
 学名:Carcharhinus melanopterus

 
2019年に境港市のSANKO夢みなとタワーで開催された「タヒチ展」にて Haie撮影


 マグロじゃありません、ツナグロでもありません。ツマグロです。
 漢字では「褄黒」。似てますが『凄』い黒ではないです。和服を着られる方ならご存知の「褄下」の「つま」です。
 オグロメジロザメというサメもかなりヒレの先が黒いのですが、背ビレにはないようなので、見分けが楽につきますね。

 水族館のカタカナ表記で「ツマグロ」 という字面だけを見て「マグロ」の仲間と勘違いする御仁を海遊館で5年に一度くらい見かけますが、日本の水族館でもかなりポピュラーかつ「サメ感」のにじみ出るスタイリッシュなサメです。

太陽光を背に受けてしなやかに動くツマグロ Haie撮影


 図鑑の分布域では日本の沿岸にもいることになっていますが、水族館で見られるのはたいてい輸入物が多いそうです。日本では自家繁殖を行っている水族館もあるそうでトレードなどして「●●水族館産」という出自を飼育担当の方から聞いたこともあります。

 海遊館のイベントで、ツマグロの子どもの歯を使った工作をさせていただいたこともありますが、画鋲の断面のような歯でした。捕縛する用の形状でしょうか、致命傷とするにはやや物足りない歯でした。

背ビレの黒い模様の下がすぐ白っぽくなっているのも特徴。海遊館にて Haie撮影


 体色が明るいオリーブ色とでも言いましょうか、浅いサンゴ礁で目立たぬ色味をしています。浅瀬などを好んで住み処にしているようで音を立てながら水中を歩くと噛まれることもあるという話も。
 1.5mほどで、間違っても食い殺されるようなことはないでしょうが、サメを興奮させないよう注意を払いたいものです。お互いの領分をわきまえる意味でも。

 ちなみにツマグロの「腸洗い」という行動を須磨海浜水族園で見たことがあります。肛門から袋のようなものがススーッと出てきたかと思うと、勢いよく泳ぎ出して煙幕のような汚れを吐き出していました。これはサメの「毛玉吐き」のようなもので、目詰まりした腸をこのようにリセットして消化不良を解消しているらしいです。

サメらしいフォルムはサメファンの間でも人気の的です。スマスイにて Haie撮影

 人間のように整腸薬を飲んだり食物繊維をとったりしなくてもお腹スッキリとは便利な機能ですね。なんだか汚い話になっていきそうなので今日は、ウーンこの辺で。

 元句は「おほけなく 浮(憂)世の民の おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖」という最澄(伝教大師)の本歌取りをした前大僧正慈円の歌です。『愚管抄』という史書を著したことでも有名ですね。

 墨染めの袖とは法衣のこと。仏道にて民を救うぞという決意を詠んだありがたい和歌です。
 色恋沙汰もあればこのような歌もある。多様性に富んでいる百人一首とサメは親和性が高い、のです。(ホンマか?)

 ※推敲、言葉選びのご提案に関してはコメントでお聞かせください。採用されたりしなかったりします。リクエストの受け付けるかもしれません。お試しあれ。

参考文献:「Sharks of the world 2013」(Wild Nature Press) 、「サメウォッチング」(平凡社)、「美しき捕食者 サメ図鑑」(実業之日本社)、海遊館各展示。

2020年1月16日木曜日

『SHARK』に一首 300匹サメちゃん大放出

あなたのサメに狙いをつけて、百人一首のサメ版をマラソンするコーナー『SHARK』に一首。
 三日坊主だけは避けたい執念の四日目です。
 サメ絵師マサさん準備はよろしいかな。
(FaceBook 「関西サメ男の会」にてサメ絵札公開中)
 早速参りましょう。

サメの腹 切り裂き見れば 数多く 三ケタ数える 子持つジンベエ

 サメ界ではホホジロザメに次ぐ知名度と好感度を持つ世界最大の魚類ジンベエザメ。
 学名:Rhincodon typus

微小なジンベエザメの歯。沖縄美ら海水族館 サメ博士の部屋にて。Haie撮影

 ちなみにジンベエの歌はもう一首ございまして、そちらはかつてネット番組で紹介しておりました。

 この歌はジンベエザメが300以上の子を産むということを端的に詠んでいます。1995年台湾沖で捕獲されたメスのジンベエザメのお腹から307尾もの子ザメが出てきたそうで、これまでジンベエザメは他のテンジクザメ同様に卵殻に包まれた子ザメのみ知られていて古い図鑑には「卵生」と記されていましたが、最近では「卵黄依存型胎生」…(母親とはつながらず子の持つ卵黄のみで成長した子が産まれる繁殖様式)とされています。
吸引力の変わらないただ一つのサメ。吸い込まれた水面が大きく凹む。海遊館にて Haie撮影

 早い話、お腹の中で卵から出てくるということになります。子どもの大きさは60センチほど。ただ出産後に子どもが何を食べ大きくなるのか、どこで過ごしているのかは全くの謎です。
 一説には敵の少ない深海で底を漁って大きくなると表層に現れて生活するようになるという話も。

サメ博士の部屋で公開中のジンベエザメの仔魚。50センチくらい。Haie撮影(映りこんどる!)
 
 日本近海では銚子沖辺りまで北上するため、定置網などにかかることもあり、その一部は水族館で飼われるようになります。
 日本一のサメ飼育種数を誇るサメマニアの聖地「アクアワールド茨城県大洗水族館」では、2022年を目途にジンベエザメの専用飼育水槽を立ちあげるというニュースもありました。
立ち泳ぎして餌を吸い込むジンベエザメ。海遊館にて Haie撮影
大体の園館は、5mほどに大きくなると放流をするので繁殖まで至りませんが、それを目指す意気込みのようです。
 沖縄美ら海水族館はジンベエ繁殖を標榜しており、恐らく成熟した7m超のジンベエ雌雄を飼育しています。 交尾もまだ目撃されていないので実現は難しそうです。

 ちなみに昨夏に美ら海水族館で7mを超えるジンベエを見て、関西へ戻ってすぐに海遊館へ行き、比較のため自分の目測を試そうとしましたが、印象はあまり変わりませんでした。
 海遊館では体長5mほどでも水槽が至近距離なので大きく見え、美ら海は水槽が巨大であるが故に距離を感じ、結果体感する大きさに差はないのだということが分かりました。
 錯覚の類になるでしょうか。アテになりませんなぁ。

 元句は「天の原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に いでし月かも」という安倍仲麿の歌です。遣唐使として30年ほど唐で過ごし、故郷奈良に思いを馳せた歌といわれています。難航路のため日本には帰れず、ベトナムに流れ着き生涯を終えたそうです。
 ジンベエのように黒潮の流れにうまく乗れれば、日本の地を再び踏むことができたかもしれませんね。

 さぁいつまで続くか、乞うご期待。需要はあるのか?

参考文献:SHARKS サメ 海の王者たち(ブックマン社) サメウォッチング(平凡社) 沖縄美ら海水族館各展示、海遊館各展示。
 
  

2020年1月15日水曜日

『SHARK』に一首 須磨のカワイイ縞模様

サメで百人一首を再現する荒野の愚か者、『SHARK』に一首 第三弾。

 サメ絵師マサさんが、またもや即レスで前回のニタリにサメ絵を付けてくださいました(FB 関西サメ男の会)。そしてかるた風のデザインも考案され、私の悪乗りにトコトン付き合ってくださっております。ネタ切れ息切れになるまでお付き合いください。

 それではどうぞ。

淡い縞 カワイイおでこ ブタの鼻 いるよネコザメ 須磨の水槽 
 
 日本ではありふれた種、ネコザメ。
学名:Heterodontus japonicus

丹後魚っ知館にて Haie撮影。
サザエワリなんて別名の通り、貝をバリバリ割って食べるという謂れがありますが、某水族館で試しにサザエをやったところ、全然食べなくて、魚の方が好みなのか残念な結果になったそうです。
 アサリをやって、貝殻だけエラから出す動画は観たことありますが、地味でした。「映えない」からやらないのか。
須磨海浜水族園 波の大水槽左端部にて。Haie撮影

 歌では須磨海浜水族園にいる、と詠っていますが大体の水族館で見られるので須磨と限定する要素は皆無です。でも、波の大水槽コーナーの左端で群れているネコザメは可愛いものです。いつか、ねじねじの卵(↓)を見つけたい。
右端の上から1番目がネコザメの卵殻。2番目はホーンシャーク(カリフォルニアネコザメ)のもの。AW大洗にてHaie撮影

 世界中にネコザメの仲間はいます(9種)が、ヨーロッパ圏、大西洋などにはなぜか生息していません。日本を北端にアメリカ西海岸とオセアニア界隈に地域限定見たく分布しています。日本の水族館では飼いやすいのか、世界中のネコザメを見ることができます。
 
ポートジャクソンネコザメ。オーストラリアの南東部の湾に生息。海遊館にてHaie撮影


 先日、東海大学海洋科学博物館の見学に随行してくださったサメ博士・田中彰先生に尋ねてみると、「そういえばそうだね、なんでだろうね」とはっきり気づいておられなかった様子。

 多分大陸移動の関係で古いルーツを持つサメは小型のものが生き残って、狭い海域に細々暮らしているんだろうなぁ、と思ってみたりしたのでした。
 飼いやすいのか、街角のすし屋の水槽にたまにいます。あれはペットでしょうね。ネコだけに。
同居のイヌザメの卵を割って失敬する不届きなこともあるらしい。仁義なき戦い!(Haie撮影)

 
 今回の元句は「淡路嶋 かよふ千鳥の鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守」という源兼昌の詠んだ歌で、千鳥が鳴く冬の須磨の情景を現しています。
  図らずも「ザメ」が入る生粋のもので、貴重です(何が!?)。
 
 さて三日坊主三日目のあしたはどっちだ!

 本日はこれにて。

参考文献など:「Sharks of the world 2013」(Wild Nature Press) 、「SHARKS サメ海の王者たち 改訂版」(ブックマン社)、海遊館サメイベント。

2020年1月14日火曜日

『SHARK』に一首 長い尾を持つそっくりサメ

 サメで百人一首を再現しようという謎企画『SHARK』に一首。

 今日も投稿します。ストックがあるので。
 でもただ歌を詠むだけでは物足らないので、コラムもどきを付加することになりますからその点がネックとなると思います。

 本日は未公開の一首です。

 「バシバシと 魚しばくよ撓(しな)る尾で  マオナガそっくりニタリかもね」

 体長の半分にもなる長い尾を持つオナガザメの仲間「ニタリ」です。
 学名:Alopias pelagicus

海遊館で解剖されたニタリ。Haie撮影
 
 オナガザメは3種類。オナガ三兄弟の、マオナガハチワレニタリ。左からダイナマイトムチムチボディ上目使いそっくりさん。という各々の属性がサメマニアの心をくすぐります。

 マオナガとニタリが見分けがつけにくく、よく間違われます。口の形で見分けがつくこともあるそうで、下唇を噛んだように両頬で押しつぶされ気味のへの字型がマオナガで、小さい鼻の穴が並んだ真下の丸めのへの字型がニタリ。
 どうです、見分けがついたでしょう?
マオナガ。国際水産資源研究所にて。Haie撮影
わかんねーよ!というツッコミが聞こえてきそうですね。

 一般的には腹側にまだら模様があるのがマオナガで、ニタリはきれいな模様のない白っぽいおなかをしています。

 ちなみにマオナガは伊勢の名物「サメのタレ」の原料として珍重されるのに対し、ニタリはあまり向かないという話も聞いたことがあります。

 ニタリは海遊館所有の園外生け簀で飼われたこともあり、その時に水面のエサを尾の先で「ピシャッ」と叩く映像が撮られたことがあります。
はえ縄漁で仕掛けにかかる時に尾びれで釣られるのは仕様なのです。実際に高知県のある地方では、正月料理の素材としてニタリを専門に捕る漁師さんがいたそうです。

 またフィリピンのセブ島でもニタリが胸びれで急ブレーキをかけ、尾ビレを逆立ちのようにイワシの群れに一太刀浴びせて真っ二つにする映像もありました。 その公開論文はこちら

 人間でいうところの「かかと落とし」ですね。
 ちなみに某シャークジャーナリストさんはニタリから強烈な一撃を後頭部に喰らったことがあるそうで、絶賛発売中の「ほぼ命がけサメ図鑑」でも詳しく描かれています。
 まぁ「陸で」だそうなんですが。

 元句は「あしびきの 山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」 という柿本人麻呂の恋歌です。一人さびしく過ごすという長い夜を鳥の長い尾にかけています。
 
  まだ親和性の高い(?)改変です。百はかなりしんどいですぞ。ちなみに初回でご紹介したサメ絵師マサさんがさっそくオンデンザメの絵を付けてくださいました。
 FaceBookにて公開中です。関西サメ男の会でアクセス下さい。

 百達成したあかつきには、カルタを作りましょうか。先は長いな、オナガザメ並みに…。

 今日はこんなところです。

 参考文献:「ほぼ命がけサメ図鑑」(講談社)  海遊館特別展「SHARK WORLD」各展示イベント。  国立研究開発法人 水産総合センター「国際水産資源研究所」公開イベント。
 

2020年1月13日月曜日

新コーナー 『SHARK』に一首

 本家サメサイト(Haieのナカミ 2004~2019)の閉鎖で、サメ情報の発信が途絶えた感がある当ブログですが、久々の更新です。

 サメ仲間のK氏がサメのイラストを日々投稿するという、サメ絵師masaとしてご活躍なのを尻目に私も拙いながら何か始めようと思い至ったわけであります。

 『サメを題材にした和歌を詠もう』 

 百人一首のサメ版という需要のありかを総ツッコミされそうな企画をおっぱじめます。

 その名も「『SHARK』に一首

 何か新しいことを始めるのに、遅すぎることはないとどなたかが言っていました。まぁ三日坊主とならず、続けばお慰み。ちなみにYoutubeで、沼口麻子さんとやったネット番組「ぶぶサメ」でいくつかご紹介したものも含まれますので、厳密には「新しい」ことではありませんことはお断りしておきます。

 とりあえず以前ご紹介した分も含めて何首(種?)かはストックがあるので、それぐらいは何とかなるのではとずいぶん高をくくって始めました。
 日々更新となるか、見ものですぞ、こりゃ。

 では改めて。

 我が海は 駿河の深みフカが棲む そこにオンデンと 人は言うなり」 

 駿河湾を代表する、4mを超す巨大な深海ザメ「オンデンザメ」
 学名: Somniosus pacificus 

 
ふじのくに地球環境史ミュージアムに展示中の2.8mの個体、多分子ども(未成熟)。
目が小さく、嗅覚を頼る索餌ではないか?


  漢字では「隠田鮫」と書くそうですが由来が不明です。
 「隠田」とは文字通り年貢を免れた秘蔵の「隠し田」で、人知れず深海魚やその遺骸を貪り漁師の網をかいくぐる巨体のイメージなのでしょうか。おもに山野にあった隠田をサメに重ねあわせるネーミングセンスはなかなかイカしているじゃありませんか。

 句は「そこにおんで!(居る、の関西弁)」の韻を踏み、深海ザメ43種が棲むという駿河湾の深海で存在感を示す巨体を表現しています。
 1990年代に駿河湾を調査したフランスの深海潜水艇ノチール号で映像に収められたものをご覧になった方も多いと思いますが、その時は7mを超すとも思われるほどの巨体でした。

 最近では、大西洋に棲む同属のニシオンデンザメが、目玉(水晶体)の放射性炭素同位体年代測定によって400歳近い寿命とも言われています。
 代謝の緩慢なサメが大きく成長するのに、安定した環境と豊富なエサが不可欠なのでしょう。
 


 ちなみに「隠田」は中世・近世に至るまで免れ明治以降に発見されたものも多く、400年ほど見つからなかった隠田もあるらしいのです。つまり和名の命名者はオンデンザメの寿命を知っていた可能性が・・・!?

 元句は「我が庵は 都のたつみしかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり」。
 世を隠遁し、都の東南宇治の山奥で暮らした喜撰法師の一首です。喜撰法師とオンデンザメのシンクロをお楽しみいただけましたでしょうか。
 
 では今日はこの辺で。
 
 参考文献:『駿河湾学』(東海大学出版) 『進化の法則は北極のサメが知っていた』 (河出新書)

本家サイト(公開終了)