2020年1月18日土曜日

『SHARK』に一首 オリーブの黒飾り

サメマニアの歌会始を催したい今日この頃、その試金石ともいえる百人一首のサメ版『SHARK』に一首。

 毎日の連投はさすがに厳しいので、折を見てぱぱっと投稿します。今はまだ歌の出来がましな方ですがどんどんひどくなるので、無理からを楽しむのもこの『SHARK』に一首の醍醐味といったところ。 (すでに目的がおかしい)

 五日目は、有名どころゆえに敢えてサメの名を入れないという異色作、ご期待ください(ワタリテツヤさんの声で)。ではどうぞ。

尾も黒く 浮き餌を食べに 泳ぐかな ピンと立つ背に 墨染のヒレ」 

 ヒレの先が黒い。これはサメ界では割とポピュラーな特徴で、数え上げればキリがないほど種類がいます。しかしヒレの先っちょにチョビ髭のような申し訳程度の黒染めはあれど、しっかり黒いのはあの子しかいません。
 ツマグロです。
 学名:Carcharhinus melanopterus

 
2019年に境港市のSANKO夢みなとタワーで開催された「タヒチ展」にて Haie撮影


 マグロじゃありません、ツナグロでもありません。ツマグロです。
 漢字では「褄黒」。似てますが『凄』い黒ではないです。和服を着られる方ならご存知の「褄下」の「つま」です。
 オグロメジロザメというサメもかなりヒレの先が黒いのですが、背ビレにはないようなので、見分けが楽につきますね。

 水族館のカタカナ表記で「ツマグロ」 という字面だけを見て「マグロ」の仲間と勘違いする御仁を海遊館で5年に一度くらい見かけますが、日本の水族館でもかなりポピュラーかつ「サメ感」のにじみ出るスタイリッシュなサメです。

太陽光を背に受けてしなやかに動くツマグロ Haie撮影


 図鑑の分布域では日本の沿岸にもいることになっていますが、水族館で見られるのはたいてい輸入物が多いそうです。日本では自家繁殖を行っている水族館もあるそうでトレードなどして「●●水族館産」という出自を飼育担当の方から聞いたこともあります。

 海遊館のイベントで、ツマグロの子どもの歯を使った工作をさせていただいたこともありますが、画鋲の断面のような歯でした。捕縛する用の形状でしょうか、致命傷とするにはやや物足りない歯でした。

背ビレの黒い模様の下がすぐ白っぽくなっているのも特徴。海遊館にて Haie撮影


 体色が明るいオリーブ色とでも言いましょうか、浅いサンゴ礁で目立たぬ色味をしています。浅瀬などを好んで住み処にしているようで音を立てながら水中を歩くと噛まれることもあるという話も。
 1.5mほどで、間違っても食い殺されるようなことはないでしょうが、サメを興奮させないよう注意を払いたいものです。お互いの領分をわきまえる意味でも。

 ちなみにツマグロの「腸洗い」という行動を須磨海浜水族園で見たことがあります。肛門から袋のようなものがススーッと出てきたかと思うと、勢いよく泳ぎ出して煙幕のような汚れを吐き出していました。これはサメの「毛玉吐き」のようなもので、目詰まりした腸をこのようにリセットして消化不良を解消しているらしいです。

サメらしいフォルムはサメファンの間でも人気の的です。スマスイにて Haie撮影

 人間のように整腸薬を飲んだり食物繊維をとったりしなくてもお腹スッキリとは便利な機能ですね。なんだか汚い話になっていきそうなので今日は、ウーンこの辺で。

 元句は「おほけなく 浮(憂)世の民の おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖」という最澄(伝教大師)の本歌取りをした前大僧正慈円の歌です。『愚管抄』という史書を著したことでも有名ですね。

 墨染めの袖とは法衣のこと。仏道にて民を救うぞという決意を詠んだありがたい和歌です。
 色恋沙汰もあればこのような歌もある。多様性に富んでいる百人一首とサメは親和性が高い、のです。(ホンマか?)

 ※推敲、言葉選びのご提案に関してはコメントでお聞かせください。採用されたりしなかったりします。リクエストの受け付けるかもしれません。お試しあれ。

参考文献:「Sharks of the world 2013」(Wild Nature Press) 、「サメウォッチング」(平凡社)、「美しき捕食者 サメ図鑑」(実業之日本社)、海遊館各展示。

4 件のコメント:

  1. おはようございます

    電車が遅延で閉じ込められているので 3首捻り出してみました(*^^*)
    春過ぎて夏来にけらし白砂の衣干すてふ天の香具山

    春過ぎて夏来にけらし白砂にコロも潜りぬ キビナゴの山

    かささぎの渡せる橋におく霜の
    白きを見れば夜ぞふけにける

    カスザメの隠せる底にある腹の
    白きを見れば夜ぞふけにける

    わたの原八十島(やそしま)かけて漕(こ)ぎ出でぬと 人には告げよ海人(あま)の釣り舟

    伊豆下田神子元かけて漕ぎ出
    でぬと撞木に告げよダイビング船

    貼り逃げです\(//∇//)\

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    1. こんばんは
      貼り逃げ上等!です。ありがとうございます。

      コロザメ撰の歌で「ころもほすてふ」の語呂は素晴らしいです。白妙のを白砂に置き換える小技を利かせつつ、好物のキビナゴを持ってくるあたりは脱帽です。

      かささぎの…もカスザメでストレート勝負とは恐れ入ります。

      わたのはら…の撰は、みのわさんのシュモクへの出会いを願う気持ちが込められていて、非常にエモいです。

      大変勉強になります。私も精進せねば。
      いつか歌会を催すことあれば、ご招待を。

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  2. 歌会楽しみにしてます(*´꒳`*)♡

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  3. このコメントはブログの管理者によって削除されました。

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