大阪海遊館で展示されたイタチザメ(現在は展示してません) |
昨日、NHK総合で放映された『クローズアップ現代 サメ!凶暴バチ! 温暖化で“危険生物”があなたに迫る?』を視聴しました。
率直に言って、サメの取り上げ方に不満がありました。
曖昧なサメの被害
このプログラムで取り上げられた“危険生物”なるものは、サメ(番組中はイタチonly)、ヒョウモンダコ、アンドンクラゲ、ヒトスジシマカ、ダニ類、ツマアカスズメバチでした。実際に起こった被害の報告はクラゲ、ダニ類、スズメバチで、 サメについては同番組で出演された多良間島の前泊氏の証言による「3,4年前 3人もやられたんで」というわずかなインタビューのみでした。
この証言は、恐らく2012年の奄美大島の転覆事故を差しているのではないかと推測されますが、「やられた」という言葉は「殺された」のではなく「咬まれて負傷した」ことを意味しています。
参考: 「現代ビジネス 経済の死角 サメ被害」
しかし視聴者は「殺された」方にも受け取ることができ、事実となる詳細な被害を追記しなかった報道側の姿勢が問われます。
サメの駆除数増加≠サメの増加
また前泊氏を「長年サメの駆除に関わってこられた」と紹介されていますが、同氏がサメ駆除を専門に始めたのは10年ほど前で、水産庁から「離島漁業再生支援事業」による補助金が出始めた時期でもあります。
そして棒グラフで示された駆除数の推移(サメ駆除を実施している豊見城市・糸満市・渡名喜村・宮古島市・石垣市における)が提示され、平成20年度に50に満たなかった捕獲が平成26年度には250を超えるようになってきています。
この数字は、一瞥するとサメそのものが増加したように見えますが、事情が変わったのは人間の側であることも理解しなくてはならない数字でもあります。
捕獲努力量の提示がないので、出漁そのものが増えたのか、取り組む作業船が増えたのか、はたまた効率よく捕れる漁法にしたのか、判断しかねるデータです。
前泊氏は真剣に取り組んでいらっしゃるのに、マスコミはサメが暴れるシーン取りたさに多良間島へ行っただけで、その実態は最近放映のあった「鉄腕DASH」の方がまだましな内容でした。
漁業被害の実例やサメ駆除後の利用などにも触れるべきだったのではないでしょうか。
メジロザメの仲間でも鼻先が尖っていないのが特徴のイタチザメ |
イタチザメが北上したかのような印象操作
他にも番組では今夏の茨城県沖でのサメについて「美ら島財団総合研究センター」の佐藤圭一氏(サメがご専門)がサメの生態に関わるインタビューに応じていました。
同氏は「水温が高い海域を好むサメ」であることを証言されていましたが、番組を見た一般の方はこの流れでは「イタチザメ」以外に浮かばないでしょう。(オオメジロザメも同海域では危険なサメですが、触れられていません)
サメがご専門の佐藤氏でも、映像のみでは何ザメか特定が困難なメジロザメの仲間です。
「普段沖縄にいるようなサメ」との証言も、その後の流れで今夏に関東周辺に北上したと思わせるようなものでした。
同氏は取材時に「これはイタチザメではない」、と言われたかもしれませんが、編集権は報道側ですから印象操作が可能です。
「水温が上昇して普段沖縄にしかいないようなイタチザメが関東にやってきた」という結論ありきの内容でした。
ちなみにイタチザメも本州沿岸に来る例は報告がいくつか挙がっていますが、あまり大きな個体の事例はないようです。そもそも茨城の個体に限って言えばイタチザメなんかではないでしょうに。
神奈川県立生命の星・地球博物館の報告→PDF
今夏のサメについて同館瀬能氏のコメント
京急油壺マリンパークのイタチザメ(幼体):現在は展示してません。 |
番組では、海水温の上昇で生態系の異変が生じているとの展開でしたが、サメに関して言えば裏付けとなる事実の明示が少なく、"番組のツカミ"の扱いであったことは間違いないでしょう。
他の魚種で南日本にいるものが北上した例を単純に取り上げればよいのであって、特定困難なサメである必要性はないのです。
サメをテーマに積極的な番組作りをしていただくのは大変よろしいことなのですが、バラエティではなく報道番組ですので、もう少し内容を詰めてもらいたいところです。
サメに関わる方々の沽券にもかかわるので、見た直後は「なんじゃこりゃあああ」が止まりませんでした。
受信料払ってるから文句の一つも言わせてください、NHKさん。
深海サメ続編マダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
(サメコラムにしたいですが、ただの文句なのでこちらで投稿します)
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