小川漁港停泊中の長兼丸(ちょうかねまる):19トン |
マグロ漁の大型漁船が横付けする地区よりも南にある小川(こがわ)港。
そこへ車で続々と集まる人たち。
彼らが待つのは駿河湾で捕れる「ミルクガニ」なるものを乗せた漁船でした。
その名も「長兼丸(ちょうかねまる)」。
船の主は、長谷川久志さん。
今では深海に特化した漁を行うことでもメディアの露出も多いことで知られています。
この番組では兄弟船とのタイトルで、漁期の狭間で深海にすむニッチな生き物を捕ることで活路を見出すアグレッシブな“異端児”に思え、ユニークな人がいるものだと感心しました。
韓国の皮革専門会社から注文を受けて、ヌタウナギを活魚で韓国に送ったり、マグロの廃棄物である「頭」と「しっぽ」をもらいうけて、カニ籠漁をする姿が見られました。
ミルク臭いと相手にされなかったエゾイバラガニを、奥さまと一緒に自ら売り捌くなど商魂たくましい部分も垣間見え、陸で奔走する漁師らしくない姿が印象的でした。
その後は、皆さんも知る通り、恐らく日本で一番有名な漁師になり深海魚を私たちの身近に見せ、楽しませてくれています。
そしてサメ好きは、少なからず深海ザメの供試あるいはメディアへの露出などで目にする恩恵も受けているはず。
なにより深海ブームを生み出した企画会社は、この方に足を向けて寝られないでしょう。
前置きが長くなりましたが、長兼丸を取り上げた記事あがっています。(毎日新聞会員登録要)
ストーリー:駿河湾の底はえ縄漁師(その1) 深海の魚に恋して
ストーリー:駿河湾の底はえ縄漁師(その2止) 「未知の世界」案内人
実は以前の記事「サメは海にいる」で私が乗った漁船は、この長兼丸さんだったのです。
ある企画で一参加者として、サメを見るツアーでした。
残念ながら生きたサメを見ることはできませんでしたが、深海ザメの解体ショーや漁の体験など非常に貴重な経験ができました。
船長もとてもフランクな方で、この海、駿河湾を心底愛しているのだなぁと思わされました。
私にもサメマニアとして知見を求められる姿勢には驚きました。「素人の座学ですよ」と遜りましたが、探究心も好奇心も旺盛な方に見えました。
この深海漁に行きつくまでは苦労の連続だったようで、まだ少年のころに遠洋漁船に乗ったり、小笠原で難破し危うく命を落としそうになったりと、魚を求めて海を開拓する姿は、古代の海民の姿を彷彿とさせます。
そういえば、体験会で最後の仕掛けを下ろす時、「おまじない」として『ついよ!』と海に向かって叫ぶ場面がありました。
先日訪れた三重県鳥羽市の海の博物館でも、海女が「つよ」と唱えてから海に潜るシーンがありました。
焼津と鳥羽。
つなぐ黒潮が同じ言葉と同じ習慣をもたらしたのだろうと、半ば感動しました。
海を平面で開拓したかつての「海民」たち。その末裔は、深海というバーティカルな開拓を始めたのだと思えます。
船長は別れ際に「いつでもきてくださいよ! サメでもなんでも見せますから」と言ってくれました。
私にも海民の血が流れているかもしれない。船長の言葉は、私の中の好奇心旺盛な何かをくすぐったのでした。
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