世界中でこの未知のウイルスと闘う日常が続く中、日本は3月頃から今までの期間に、この脅威に立ち向かうべく遍く活動を自粛することによって拡大傾向の抑制に今のところ成功しているように見えます。
衛生観念の正確な情報を得る機会、自主性を重んじながらもそれに甘えない対策という難しい課題を一人一人がそれなりに実践していたのではないかと思います。
私Haieも春先の水族館訪問やイベントはすべてキャンセルし、自粛モードへ入りました。
5月25日の緊急事態宣言解除から6月に入り、経済的な日常を取り戻す動きが徐々にあり、自粛一辺倒から行動の選択を考える場面が出てくるようになりました。
そんな中、各地の水族館も感染対策への準備が整い、一部条件付きでの再開へとこぎつかれました。
私が特に思い入れのある海遊館もそのひとつです。密閉空間の是非・集客・サービスなど様々な課題を乗り越えてどのような形で再開へと導けたのでしょうか。その訪問録となります。
リニューアル&30周年を迎えた海遊館…まさかの事態
海遊館は、大阪港区天保山に位置する関西を代表するレジャー施設であり水族館です。1990年7月20日にオープンし、今年は30周年を迎えるにあたり、リニューアルとイベント開催など準備されてきたはず。
しかしお披露目のタイミングとほぼ同時期に「新型コロナ感染拡大」という憂き目に立たされたしまったのです。
私が最終で訪れたのは2月中旬、当時の状況では接触感染の懸念から、入場制限が改札ゲートで行われていて、年パス保持者でも待ち時間がありました。入館者数は普段よりも若干少ないものの、外国人観光客の減少から日本人の利用者がこぞって訪れていた印象を受けました。
その後、整理券配布などで対応するも、すぐに休館へと踏み切りました。海遊館の設備上、対応が難しいとの判断だったのでしょう。必要な対策を講じる期間ということでの臨時休館扱いでしたが、感染拡大が収まらず延長せざるを得ない状況が続いていきました。(他館では入館の対応で凌ぐ施設もまだありました)
水族館は我々が思う以上に、エネルギーを消費する巨大な施設です。つまり日々のランニングコストがとてつもなくかかり、またそれを維持するスタッフの数も膨大なものです。
それはもし観客がいなくても、生き物を管理・飼育し適切な環境を維持することに変わりはありません。
休館後もその様子を動画配信する(おうちで海遊館)など、施設としての存在意義を失わないようサービス提供を続けられていました。(私はあまり見過ぎると欲求が高まるので、修行僧のような心理でいました)
聞くところによると、スタッフも密を避けるため時短+交代勤務を余儀なくされ維持することの難しいミニマムな運営を続けざるを得なかったようです。
私も落ち着きだしたら、まず行きたいと思ったのが「海遊館」でした。
そして待ちに待った再開。でもいつものように気軽にお出かけという訳には参りませんので、事前情報をチェックし、体調万全で臨みました。
事前予約と入場制限での対応
2020年6月現在、海遊館への入場は「チケット予約」のみで対応しており、いわゆる当日窓口販売、コンビニ発券や企画乗車券、招待券などの適用はされず、チケット予約サイトによるサービス(Webket)で人数制限+入場時間指定での受付というものに限られています。(6/17より発売済みチケットの一部を窓口対応するそうです)
私もHPからWebketの登録を行い、当日券購入者か、年間パスポート保持者で予約方法が異なるため、年パス保持者専用の支払い「0円」予約をしました。
購入する場合は、各種クレジットカードでのみ支払い可能のため、カードを持ってない方は購入できません。(コンビニなどでクレジット会社のトークンカードを買えば可能かと思われます)
各種コンビニ払いも対応可能なようです。(2020.7.10追記)
入館時間を選択する画面で10:30~16:45(閉園1:15分前)までが購入できます。5日前から予約可能なので休日などは早めに予約する必要がありそうです。事実私が訪れた日は、大阪港駅や周辺の看板に「本日完売」の張り紙がありました。平日なら余裕があるかもしれませんが、休日は狭き門のようです。5日前に朝一番の10:30が予約できました。スマホで登録したメールに予約情報が届きました。このメールが入場券の代わりになるようです。もちろん年パスを忘れずに。
雨の天保山、ドキドキの体温チェックをパスで無事入館!
当日朝は雨模様。衛生用品(マスクや携帯ウエットティッシュ)を準備、体温計で体調に問題のないことを確認してから出発です。
自宅から海遊館最寄りの大阪港駅までは、休日ながら人出はやはり7割程度の感じで、地下鉄も普段なら大阪港駅まで割と混雑しているはずが座席に隙間もあり、途中の弁天町駅辺りを過ぎると閑散としていました。
時間指定ということもあり遅れてはなるまいと、30分以上前に現地入りしました。少し離れた天保山の防潮堤が終日閉鎖され、普段と違う景色となっていました。人気のないところでつけっぱなしのマスクを外すと、久々に嗅ぐ海の匂いがいつもより鼻腔を刺激しました。
入場ゲート付近では、同じ朝イチの予約をされた方が20名ほどでしょうか、屋根のある通路のベンチで思い思いに待機されてました。家族連れ半分、残りはカップルと私のようなマニアが半々くらいでしょうか。雨脚が強まると開場前のマーケットプレイスの庇などへ雨宿りなどする方も。
時間前にゲート付近の様子を見ますとスタッフの方がテープなどで地面に区割りをし、待機列の間隔を視覚的に見えるよう工夫をされていました。
開館15分前に整列が始まり出し、私も待機列に加わりました。
そこで一人のスタッフの方に呼び止められ、入場方法についての質問を受けました。恐らく広報などの方でしょう。(面識はなかったか、もしくはイベントでごあいさつしたことがある方か…?)
予約での当日券購入と年パス者の割合についての意見を求められました(アンケートですね)。施設側もしばらくは手探りでの運営となるようです。聞くと普段の半分以下での入場者だという話でした。
恐らく決まった形というよりも柔軟に状況に応じて、人数調整など行うことになりそうです。団体客の受け入れも中止しているので、運営としてはかなり厳しい数字の推移となるでしょう。
割とスムーズに待機列も徐々に進み、箱型の大きなブースで体温チェックです。全身写しのモニターで体温が表示され、チェック完了。人によっては精度を上げるため別の方法でもチェックは行われていました。
改札ゲートで年パスと、指定時間の表示されたメールを示し、無事入館です。(年間パスも無条件で4か月期限延長との事)
入館すると、消毒液が館内に設置されていたので、さっそく手を消毒。看板など少しディスプレイがリニューアルされていておしゃれな感じに。途中カマイルカのホリゾントがソーシャルディスタンスを示します。2m空けて欲しいそうです。カマイルカって2mなんやな。ふーん。
ミュージアムショップとガイドカウンターのコーナーでは、いつもより少なめのガイドスタッフさんが控えめにお辞儀で歓迎してくださいました。声掛けの案内は極力控えておられるようです。
また園内ガイドやツアーも休止されており、再開が望まれます。少人数催行ならこの人数でいけそうな気も。ただスタッフの方も普段より手薄なようで、難しいのかもしれません。接触を避ける=接客を避けるというもどかしい状況です。
リニューアルされたガイドマップ(いままでにない、かなりの充実ぶり)を手に取り、歩みを進めます。
通路の窓にはスタッフが手書きでペイントした歓迎メッセージやイラストが描かれていて、声に出せない喜びをそこに表現されていて少し胸が熱くなりました。再開への喜びに他の観客も見入っていました。
最初の時間ということもあり、館内は少ない観客で快適でした。いつも人でにぎわう水中トンネル「アクアゲート」も、サメ類でいつもいるイヌザメは見られず、ネコザメなどやや控えめな展示でした。魚種も絞って混雑を避ける意図があるのかと。
いつもは抜けた先でジンベエ模型との撮影がありましたが、そこも撮影サービスは無し。セルフで撮られる方はちらほらいました。自撮り台でもあれば、いいかも。接客の省略はやむを得ません。
その先のエスカレーターも間隔を空ける注意書きがあります。少ないので意識せずとも前後は空きます。
思えば、海遊館は「ビル」なのです。密閉空間・密集をしてしまう場所なので、そこをどう解消するか、悩ましい部分でしょう。
大阪港の港湾施設を尻目に最上階へ。このワクワクをこらえる上昇時間は独特の「間」です。空から山へ、そして川から海へ、海から海を自在に回る旅の始まりです。
いつもの、いきもの。いくつもの、いつくしきもの
※この先、館内ガイドとなりますが海遊館への思い入れが強すぎるため、ガチで引かないよう生暖かい目でご覧ください。多分、ベースでの海遊館をキチンと紹介するのはこれが初めてだと思います。リニューアル部分に触れつつご紹介します。
最初のコーナーは「日本の森」。海へと旅立つプレスタートです。コツメカワウソのいる水槽を上からのぞくとまだ体を丸めてお眠り中。平和な日常を垣間見ます。東南アジア原産の彼らをあえて展示することでニホンカワウソがいたかつての日本の原風景を再現しているそうです。淡水魚やオオサンショウウオもいて川を下る様相です。
ビルの屋上といっても都会のオアシスを感じる空間で、季節ごとに花が咲き乱れとても開放感があります。
普段は大渋滞のコーナーも、各水槽に一組ずつといった贅沢さ。とはいえ長居するわけにはいきません。少しずつ歩みを進めます。サワガニのいる滝から階段を下り水鳥のいるコーナーへ。カワウソの水槽も少し暗めでまだ準備中のようです。
川はやがて海へ通じ、海面を漂流する旅へと変わります。かつてラッコのいたコーナー「アリューシャン列島」。千島列島よりさらに高緯度の地域を再現して、歌舞伎の隈取のような面構えのエトピリカが浮かぶ水槽へ。
マス類も泳いでいて、寒い地域の生態系が再現されています。私たちは海へ下り、太平洋を北から東へ進んでいくのです。
アラスカ半島を過ぎて、カナダより南へ、カリフォルニア半島の手前「モントレー湾」では、鰭脚類、ゴマフアザラシやカリフォルニアアシカなどが縦横無尽に泳ぐ広めのコーナーへ。半水面では、彼らと目線がよく合います。コーナーワンフロア下では久々の人の群れに、水中から興味深そうに近づいて愛嬌を振りまいていきます。サービス精神旺盛です。
特にアシカの鳴き声は、海遊館の屋上から館外へもよく響き渡り「オゥオゥオゥ!」と六甲おろし見たくタイガースを応援するいい声です。本人は「シーライオン」とも呼ばれますが。
徐々に緯度を下げて、南北アメリカの境、「パナマ湾」です。ここの主は、アカハナグマ。普段警戒気味に木の上や壁際にいますが、今は軽快な足取りで闊歩しています。
この子にとっては人が少ない方がいいみたいです。以前ガイドツアーでは、赤にちなんだ名前をそれぞれが持っていたと聞きました。「パプリカ」「アセロラ」「リンゴ」などだったかと。
このコーナーを見て、海遊館は水族館じゃないの?という方もいますが、水族館でもあり動物園でもあり、植物園でもあり、博物館でもある、環境複合総合施設とでもいうべきスタンスです。パナマ湾は海の部分に極彩色の魚がいたりします。階下では先の「グレートバリアリーフ」といつも間違えます。
しばらく行くと南半球「エクアドルの熱帯雨林」。名の通り赤道直下で多雨な気候で、淡水の熱帯魚が群れています。ここも普段は混雑ポイントです。今回は水槽の全容が見えるほど空いています。ここにはピラニアもいて、同じ水槽にカピバラがいます。●口浩探検隊世代には絶妙な組み合わせでしょうか。
カピバラも「お、人が来た?」と背筋を伸ばしてこちらを見ます。普段は動きがなくて、毎回収めた写真がどれも同じ表情という、不動のセンターです。
ちなみに各コーナーの案内板が、リニューアルされコーナー表記のロゴにそれぞれの展示生物が隠れていたりします。写真だった標示も、特徴がつかみやすい線画のイラストへ。あと、地味にコーナーの通路上部で気温や緯度経度の案内をしていた赤いLEDは消灯していました。長年、ベストショットのフレームに映りこむ赤いあんちくしょうは燃え尽きちまったようです。あばよレッド。
さて次はペンギンのいる人気コーナー「南極大陸」。オウサマペンギン、アデリーペンギン、ジェンツーペンギンがいて、かなり密な空間を演出しています。私の記憶が正しければ、かなり前ここにイワトビペンギンもいた時があったような。記憶違いですかね。
訪問時は給餌の真っ最中。若い給仕係二名と記録係一名でマスク着用の上、仲良くやっておられました。水槽がいつもしぶき痕で見えづらいので、定期的に洗い流す装置でもあればと思う時があります。塩のもやもやでフォトジェニックなペンギンたちがよく撮影できます。水面を泳ぐローアングルも狙い目です。たまに雪が降ります。半袖で雪かきする飼育員さんを見て涼むコーナーでもあります。
南極から少し北上してニュージーランドとオーストラリアの境目「タスマン海」。
ここにはカマイルカがスイスイと角地の広めなコーナーを泳ぎ回っています。水面に浮かぶオブジェと戯れる姿や給餌で少し飼育員の方とコミュニケーションをとる様子などは見応えがあります。たまに飛んだり跳ねたりするらしいのですがショー要素はほぼなし。ショーなどなくても彼らはとても魅力的な生き物に映ります。
この日は、水槽の前に立つと、目線を合わせて寄ってきてくれました。彼らもサービス精神の塊です。
イルカたちの歓迎に、どの観覧者もとても大喜びされていました。
さあ一気に熱帯サンゴ礁の海「グレートバリアリーフ」へ。35万平方kmの世界最大のサンゴ礁を擁する海です。ここは多分35平米ぐらいかと(もう少し広いよ)。
本館ではここでようやくサメとご対面です。サンゴトラザメとエポーレットシャークがサンゴのオブジェを行ったり来たり。はうように上ったかと思えば、滑空のように滑り落ちていったり、あとのコーナーでも楽しめます。
このコーナーは地味に潮汐を再現していて、地面ギリギリの水面の時もあれば、中腰で見える時もあります。カラフルな魚も多く、インスタ女子が粘るコーナーです。しゃがんでいろいろ見せないように気を付けてください。(余計なお世話だ!)
さあ、突き当りを曲がった次のコーナーはお待ちかね。
おなじみの魚が群れる…「瀬戸内海」です。
この落差! オーストラリアからいきなり日本! アラフラ海もセレベス海もフィリピン海もすっとんで、
「瀬戸内海」。
大阪港、ここは浪速のど真ん中。ツッコミどころを用意し、ボケで豪快にこける演出なのです。
「にほんやないかい!」という、これは予測可能回避不可能なものなのです。気づく人は皆無の、壮絶なボケなのです。以前は対面に「太平洋」の出鼻もあったのですが、混雑解消のためパネルでふたがされています。ここは海遊館長年のツッコミポイントであるのです。
文句垂れるオッサンの「ここから、うごかへんやないかい、せとないかい」が10年に一度は聞けるスポット。新喜劇のギャグにはならんやろうな。
ほんで食べたらおいしいタコとかウツボとイセエビの三すくみ。化け物級の大型のアカメも泳ぐコンパクトながら詰まっている水槽では、サメもいます。
私のお気に入り、「カスザメ」です。砂に埋まるでもなく、ただ海底に寝そべっている平たい彼(彼女?)。
しつこく撮影するのは私ぐらいと思いきや、普段はけっこう人気があったりして複雑な気持ちになります。
「カッスン(こう呼んでいる)、元気か?」といつも心の中であいさつを交わします。
たまにヒラメと仲良く、ごろごろしてます。
で、気を取り直して、メインのこれぞ海遊館!「太平洋」コーナーです。
5400立米。間違いなく世界屈指の大水槽です。構造もビルの真ん中を突き抜ける十文字型の特殊な出で立ち。
しかしこの構造が、海遊館を海遊館たらしめるテーマと連動した巨大な海そのものなのです。
4mを超えるジンベエザメ2匹が、ぐるぐると水槽を巡る様は、逆メリーゴーランド。
水槽の前に立てば必ず横切る巨体を味わうことができます。
仰ぎ見る水族館は数あれど、目の前を行き交うジンベエが迫る姿はやはり海遊館の醍醐味です。
美ら海水族館には8m近いジンベエザメが泳いでいますが、水槽越しでは近すぎて、圧迫感を感じてしまいます。それがイイという水族館ファンもいるのでしょうが、私はやはり目線の合う状態が、生き物を最も魅力的に見られる視点だと思っております。だって目が合うんですよ! あのジンベエと!
この体験は、インバウンドの方々も感動されるポイントだと聞いたことがあります。私はこの距離の近さが海遊館の魅力の一つだと確信しています。
そしてもうひとつ、この太平洋水槽の到達とともに、観覧経路はその周りをぐるぐると巡る「環太平洋」をイメージした通りの順路となります。
途中にはイワシの群れが渦巻く「チリの岩礁帯」。サメファンは思い出深いエビスザメがいたことも記憶に新しいコーナーです。
さらにウミガメの泳ぐ「クック海峡」、旧「ケルプの森」だったイカを展示する水槽には、マンボウの姿はありませんでした。 最深部に近い「日本海溝」は、タカアシガニを筆頭にサメでは「アブラツノザメ」、サメと同じ軟骨魚類の「ゾウギンザメ」がゆらゆらと泳いでいます。
日本海溝のコーナーは、四方から見られたのですがリニューアル後は、L字のみ観察でき、通路は封鎖され、館内喫茶「マーメイド」が、「cafe ROF(リングオブファイア)」となって拡張リニューアルされていました。席数は減らされていたものの、大阪港を一望できる窓際と水槽を眺められる席などに分かれています。
水槽側は今は席を解消しているようでした。
私も少し休憩がてらカメラの調整など兼ねて、入店しました。
マスク姿の店員さんに、少なめの利用客。ホントはもっと大混雑するはずだったのにと、想像してしまいます。軽食とドリンク提供で、ジンベエザメパンも売っています。私は、夏場に最速で溶けて失敗した「ジンベエソフト」に再挑戦。 人目をはばかり、オッサンがソフトクリームを味わいます。許せ!
衛生への配慮は、間隔の空いた席数とともに、離席後の消毒がこまめでかなり徹底していました。家族連れでも心配なく利用できると思います。まさにこの時期だからこそ積極的に利用して、満喫して欲しいスポットです。マニアはこの時期を逃すな!と言いたいです。
順路はこれまで見てきたコーナーの深部へといざない、さまざまな動物の表情を何度も味わうことができます。人によっては、何度も同じ生き物が出てくると興ざめすることもあるようですが、私はむしろいろんな視点でその生き物に遭遇できる他の園館ではあまり味わえない展開を高く評価しています。
例えばエトピリカが水中をペンギンのように滑空する様や、ペンギンが背中から気泡をまきながらスイスイ泳ぐ姿、カマイルカが縦横無尽に水槽を駆け巡るチェイスを披露するかと思えば、水中で愛想を振りまくアザラシとアシカ、アカハナグマのずっと下で寝そべるコモリザメ。
グレートバリアリーフの急な斜面を上へ下へと忙しいカラフルな魚たちと底に散らばるサンゴトラザメの卵殻の様子など、見どころは尽きません。
もちろん、太平洋水槽は、順路を外れるまでずっと見続けながら進むことが出来ます。表層・中層・底層の魚種の違いや水槽の雰囲気の差など、同じ水槽とは思えないほど豊かな表情を見せます。
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ハンマーヘッド、上から見るか?下から見るか? |
しかもひと続きの順路でそれが達成される機能性もまた、あっちこっちへ行かずとも順々に追って行ける点で優れています。
思えばこの設計が30年前にすでに達成されていたことは、21世紀を先取りした思想であったというべきでしょう。いまさら海遊館を私が褒め称えなくてもすでにこれまでの入館者数が物語っていることでしょう。
海遊館と私。奇跡は常に互いの間に
だいぶツンデレに開館からの30年過ごしてきました。つい最近まで年パスを作らず、律儀に入館券を購入し年5回以上は行っていました。(おおよそ2回で元が取れる年パス…今年から+2000ほど値上げされます)
なぜかというと、ネットで訪問記を乗せるためにいろんな施設を訪ねて頻度を重ねる中で公平に施設の取り組みを評価できないのでは?という悩みがありました。取り組みを是々非々で評価するなら、無条件に施設の肩入れをするような立場であってはダメだと。
屈折した下らないこだわりかもしれません。
一方サメサイトをやる上で見る側になるべく公平な意見を提供したいとの考えもあったのです。しかし好みは変わらないのであくまで私のスタンスで紹介すべきだとの結論に至りました。
海遊館もまっすぐ王道に水族館として歩んでこれたわけではない、と見続けて思います。
迷走とまでは行かないまでも、施設のキャパと集客が釣り合わない時期があったり、生き物の展示に試行錯誤を重ねたり、オモテだけでなくバックヤードでもさまざまな労苦を経て、今の地位や評価につながったと思っています。そしてまだ伸びしろのある施設だろうという可能性を行くたびに感じます。転石苔むさず、を地で行く水族館、そんな見方をしています。
ちなみに私が最初期に見た生き物のラインナップは、今とかなり違うもので、かなりエッジの効いた展示群だったと思います。
環太平洋を標榜する「リング・オブ・ファイア」というテーマの束縛と柔軟性のバランスを、現場感覚でされていたと感じる場面があったりして、当初の組織、第三セクターで大阪市の設立会社「大阪ウォーターフロント開発」から、近鉄グループ「株式会社海遊館」まででも、如何に見せるかという点で常にチャレンジがあったと思います。
多様化する価値観の中で、変わらず支持されるためには、ニーズにこたえるばかりでなく、ニーズを生み出す姿勢でいることがパイオニアたる海遊館の姿でしょう。
「ふあふあクラゲ館」からクラゲ展示のリニューアル「海月銀河」。映える展示は姉妹館ニフレルの影響を感じます。そして新体感エリアで「北極圏」での極寒の魚や無脊椎動物、天井から挨拶するワモンアザラシ。
「フォークランド諸島」では、イメージ通りの岩場をホッピングする「イワトビペンギン」。
ついに生き物と触れ合えるサメエイのタッチプールとなる「モルジブ諸島」(なぜかインド洋)。
直近の大幅リニューアルでは話題をさらい、より魅力的な生き物との機会が提供されたことを素直に喜んでいました。 他方、順路に人間と生き物の関係を示す環境啓蒙の展示も付加されています。プラスチックに苦しむジンベエなどのわずかで地味なものですが、意外と気にかけて見る方も多いのです。楽しいだけではない生き物とのかかわりがそこにあります。海遊館ではプラゴミ削減の一環として、ショップでのレジ袋は紙製品へと移行しています。雨天時は少し不安ですけど。
さて接触機会の多い展示で新型コロナの影響をもろに受けたのはこれらのコーナーでした。
近さが売りなゆえ、ビニール幕や柵でなどで遮断されたりし、特にサメタッチコーナーは封鎖されていました。触れられない分、新たな展示方法を模索できないか、この時期では課題の多いエリアです。
ここまで、ビル内の換気対策として非常通路などが解放されたり(立入不可)、館内座席の縮小など、念入りに対策されています。不安解消と感染拡大防止を念頭に施せる術は尽くされた感があります。今のところ不安に思った場面は、来館者同士の距離感(生き物に夢中になるが故)以外は皆無です。強いて言えば、この制限状態が続くと施設の維持が厳しいものになるなという部分でしょうか。
運営側の視点を想定すると、少数観覧を続けることから徐々にリフトアップしていかなければならないだろうと思います。状況の判断が厳しいのは変わらないでしょう。
開館30周年を迎えた奇跡と情熱
開館から30年。いくつかの展示ブースでは特別展示となるパネルなどがありました。海遊館の成り立ち、設計集団ケンブリッジセブンや立ち上げ直後の様子などは、見ていて面白かったです。
当時は日本もバブル景気で、箱モノがジャンジャン作られた時代です。南港港湾開発のATCビルなど負の遺産に対して、北港大阪海遊館はそんな時代の方舟のようでありました。
記録に登場する、今ではお歴々の関係者も若く、新しい時代の担い手として写真やビデオに映っていました。若い!フサフサ!痩せてる、男前や!など(好き放題の感想で申し訳ない)、在りし日の姿はこの海遊館という時代の波を先導する活気に満ちていました。時代が海遊館を作り、海遊館が時代を作った、そんな30年だったでしょう。
特別展示30周年記念ブースでは、これまでのノウハウの蓄積の紹介とともに未来の海遊館への言及がありました。
もっと没入感の強い施設の構造を追求したり、文科的要素との融合を目指したり、色々とまだまだ海遊館は変化し続ける生命へのスタンスで私たちを魅了し続けることでしょう。
融和と調和、もう一歩踏み出せるステージはそう遠くない未来に実現できそうな気がします。
海遊館が一つの巨大な生命装置で、私たちもその一部となり水となって循環する姿を想像するに、系列のニフレルがやや人間よりの視点で統一されていることから一種の実験的施設と考えて、さらにそこから生命観の醸成を促すより自然に近い施設となるでしょう。
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惜しい! イヌザメベビーのハートまであと一歩 |
海遊館を巡る順路は、自分が例えば一粒の滴になって空へ上昇し(長いエスカレーター)、やがて雨となり川へそそぎ(日本の森)、海へ至り、太平洋の周りを囲みながら様々な気候の下で旅をする、環太平洋の命の輪を巡るものなのです。
なので、水面から徐々に深度を下げて水中へエントリーする疑似体験ができるのです。ドボンと海へ浸かるのではなく、陸へ進化した私たちをじわじわと海へ回帰させる意図を汲むことができるでしょう。
海遊館の凄さというのは、まさに進化という時計の針を逆回りにし、自分の命の原点を海から見直す疑似体験を無意識に味わえる点にあります。だから他の水族館のテーマがきわめて文明的なのであるのに対し、自然のままに近いすがたを見せたいという意図が生命観の提供につながってくるのです。
1990年にすでにそのコンセプトは確立されていた、ということを知るとどれだけ先進的でまた普遍的な生命へのアプローチがされていたか、驚愕に値します。
10歳だった当時、私はジンベエザメの大きさに感動すると同時に、「すべての生き物はつながっている、そこに自分もいるのだ」という真理を強烈に焼き付ける体験をすることができたのです。
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今あなたがここにいるのも、生き物と出会うのも奇跡。 |
30年という月日は生命史から見ればちっぽけなものですが、海遊館が観客に与え続けた一瞬はその月日以上に広がりを見せたのではないでしょうか。
2020年、未知のウイルスが文明社会を脅かしている昨今、海遊館が届けているメッセージは、生命礼賛であると同時に自然の一部である自分の姿を再認識させるという意味でこれ以上にない価値を持つことになるのです。
人間が文明を享受することで脅かされている生命がそこにはあるのだということを考えると、ウイルスは脅かされる側の視点を与える唯一の人類への戒めにも思えなくはないのです。自然に意志があるのなら、人間の活動を制御する手段にウイルスが選ばれたのは、人知を超えた何かを感じてしまいます。
文明への疑いの眼差しと生命への思慕は車の両輪で、新たな社会へ通じることでしょう。
最後にサメファンとして、各地への展開として徐々に行動範囲を広げていこうと考えていますが、日々の状況を注視しながら、やめる時はきっぱりやめるという決断もまた必要だと思っています。
以下は、今回の利用で私が意識して注意した点です。厳しいのかもしれませんが行動選択の材料として参考にしてもらえればと思います。(これを守れ!とは言えません)
・体調がきわめて正常であること。(訪問前に自主的に体調・体温検査する)
・感染予防の措置に必要な衛生用品を携帯し、いつでも使えること。
・移動は速やかに、かつ静かに。
・意識して人との距離を測り、常に間隔を空けること。
・設備などに極力触れることのないよう注意を払うこと。
・事前情報をチェックし、スタッフから指示されたことなどをよく聞きいれること。
・生き物に夢中になりすぎないようにし、周りへの配慮を欠かさぬこと。
・いつもよりも多めに消費行動をする。(少数来館でも単価を上げて貢献)
・滞在時間をあまり長く取りすぎないこと。(密への配慮)
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新しくなったスーベニアショップ、グッズも充実。おかげでかなり散財しました。 |
無論、気にしすぎると疲れるのであくまで楽しむためのステップとして、この段階かなと客観的に判断していきましょう。なれれば日常になる、ので自然と身に付けたいものです。
お互いを思いやる気持ちこそ、感染拡大を防ぐ大きな武器です。
ぜひ楽しんでお過ごしください。
またどこかでお会いしましょう。
Haie